研究室活動
旧東京大学教育学研究科
恒吉研究室アーカイブ
本ゼミでは、日本や諸外国における教育関連の場のフィールドワーク、教育の国際比較研究、多文化共生に関連したテーマ、日本におけるニューカマー研究、文化的マイノリティの研究、多文化教育/国際理解教育/留学生教育等に関連した研究を進めています。海外への留学や海外調査を行なう学生も少なくありません。
学部生研究テーマ
- 在日コリアン青年が抱えるアイデンティティ葛藤の構造ーライフストーリー的分析からの考察ー
- 小学校における若手教員増加の実態―神奈川県小学校を事例として―
- 日本における留学生支援の事例研究―大学の受け入れ理念と体制に着目して―
- エンカレッジスクールの取り組みと生徒意識―学業不振層を対象とした教育の可能性を探る―
- 中華学校とグローバリゼーション―横浜山手中華学校の事例を中心として―
- 児童労働と教育に関する一考察―カンボジアでのインタビュー調査から―
- 公立中高一貫校の教育戦略とジレンマ―東京都における事例に着目して―
- <新しい家庭教育雑誌>の知識社会学―親の教育責任に着目して―
- 上京大学生の「居場所」としての県人寮―寮生のインタビューを通して―
- コミュニティー・スクールに関する一考察―保護者のインタビュー調査に基づいて―
- 「子どもの貧困」に対する政府及び民間団体の取り組みに関する考察―イギリスの事例を参考にして―
- 早期教育に見る現代の教育観―言説分析からの考察―
- 地域差から見るニューカマー教育の考察―アクターの問題意識に着目して―
- 教育学部生の進路決定に関する一考察―筋を通すまなざしとその葛藤―
- 大学運動部における「部活観」の形成に関する研究―T大学ソフトボール部の事例を通して―
- 在日ミャンマー人を通してみるニューカマー児童・生徒の支援に関する一考察―ボランティア活動の分析から―
- 人権教育を土台とした平和教育の再構築に関する研究―大阪府K市の公立中学校を事例としてー
- 日本語指導が必要な児童を支える人々の連携に関する研究―新宿区の事例から―
- 地方公立進学校の「教育効果」に関する実証的研究―「文武両道」規範を手がかりとして―
- 指導主事を通してみた教育委員会の役割に関する研究―英語教育の事例に着目して―
- 学校外活動に携わるアクターの意識に関する研究―「放課後子ども教室」に着目して―
- 日本の公立小学校におけるニューカマー児童の受入れと教師の対応
- 居場所型施設での人間関係が若者の将来展望に与える影響
- 小学校での英語教育に対する教師の意識について
- 日本人の英語学習への動機付け
- 留学生の就職活動
- 公立男子校・女子校の共学化における理念と実態に関する研究―移行期の在学生のインタビューから―
- 学習支援におけるNPO法人の可能性と課題―中学生と外国人講師による、テレビ会議システムによる交流活動を事例として―
- グローバル化の中で日本人学校が持つ意義についての考察―オーストラリアのA日本人学校を事例として―
- 大学のセクシュアル・マイノリティサークル研究―当事者へのインタビュー調査から―
- 外国につながる子どもたちの就学支援に関する研究―NPO法人による支援教室の事例から—
- ノンフォーマル教育分野における参加型開発の研究―カンボジアのコミュニティ学習センターを事例として―
- 学習指導要領と学校現場
- 帰国子女に関する社会の認識と当事者の認識について
- インターナショナルスクールの生徒の日本に対する認識
- 中国における子どもの社会化
- 「生活者としての外国人」のための日本語教育という視点から見た、地域日本語教室の持つ課題と可能性
- 世界寺子屋運動を通して、日本の国際教育協力について
- 幼児教育/学校における人間関係
院生 研究テーマ
- "<居場所>概念と実践の可能性―事例研究を通して―"
- "子どもの貧困対策における教育と福祉の連携の実態に関する実証的研究―困窮家庭の児童に対する自治体の学習支援事業に着目して―"
- 中学生の生活時間の計量社会学-「受験体制の社会学」再考-
- "わが国における作文指導の「表現内容」から「表現方法」への変容過程―1980年から2002年までの国語教育雑誌の分析を通して―"
- "若年層の自律的キャリアに関する実証的研究―大卒20代を対象にした転職者インタビューとキャリア面談を題材に―"
- "教員採用における「選考」に関する研究―教育公務員特例法の成立過程を中心に―"
- 資格取得ルートと労働者の「知識」・「技術」・「態度」との関連についての考察 -介護福祉士を対象とした質的研究-
- 外国にルーツを持つ子どもの自己認識 -地域学習支援教室に通う中学生に着目して-
- ナショナリズムをめぐる学校・生徒それぞれの言説の関係性について -ジャワ島の学校を事例として-
- シティズンシップテストによる移民統合の比較社会学 -欧州と北米におけるテスト普及の影響に着目して-
- 大卒学歴内部の不平等はなぜ生まれるか -専攻間格差の計量社会学-
- 日本社会における学歴の収益の生成メカニズムに関する計量的研究 -スキル偏向的技術進歩に着目した分析-
- 定時制高校における就職指導のエスノグラフィー -“頑張らせる”指導とその臨界点-
- 海外で子育てをする日本人保護者の教育戦略
- ICTを用いた通信教育における教師と学習者のコミュニケーション
- 就学前機関における子どもの社会文化的背景に対する認識
- 「アクティブ・ラーニング」における主体的・対話的態度に関する研究
学部生からのメッセージ
恒吉ゼミ所属 上田友梨香さん
タガログ語の飛び交う会話、バナナの葉で包まれたスナック、話題となるのはフィリピンのゴシップ……。
これらは、私が卒業論文を執筆する際に通ったフィールドで見聞きしたできごとです。外国でフィールドワークをしたの?と思われるかもしれません。いいえ、私のフィールドは日本国内。国内には、日本人とともに働き暮らす、フィリピンにルーツを持つ方が大勢います。私の研究のフィールドは、そんな彼らが集う教会でした。
そもそもこの研究テーマに至ったのは、私がこれまでほぼ無縁で生きてきた、日本で暮らす外国人について理解したいと考えたからでした。これまでの研究を読み進めるうちに、宗教の意味を問うような社会学研究が日本にあまりないことを知り、それを切り口にできる教会をフィールドに卒業論文を執筆できればと考えました。
研究において最も大変だったことは、研究としての面白さ、言い換えれば私の研究の独自性をどう出すかということでした。冒頭に述べた文章から想像されるかと思いますが、フィールドの記録自体、異国情緒を漂わせ、興味深いものでした。しかしそれは私の力ではなく、フィールドの力。その素材を研究としての面白さにどのように昇華させるかに頭を悩ませました。振り返れば、ゼミで社会学的想像力をどのように働かせるかを学べたことが、私の研究を後押ししてくれたのだと思います。恒吉先生には早い段階から、研究対象は誰?と問われ続けました。それを受け私は、フィールドで明確に研究対象を定めることができ、視点を確立して考察を深めることができました。一旦うまくいくと、フィールドに行くたびに出会うできごと一つ一つからたくさんの発見があり、ワクワクしながら卒業論文を執筆することができました。卒業論文には入れ込むことのできない内容もたくさんあったほどです…!こうしてまとめた研究成果を、スウェーデンで行われた教育学部主催のシンポジウムで発表できたのも貴重な経験でした。
こうして研究への達成感はあったものの、課題も残りました。私の研究で得られた知見は、一つのフィールドでの限られた知見ですので、日本に暮らす外国人のほんの一部を描いたにすぎません。そして何より、私が卒業論文で達成できたことは問題を明らかにしたにすぎず、それを解決する手立てを持ちえません。今後は明らかになった問題に対して、社会の一員として何をするのかを自身に問い続け、行動していきたいと思います。
最後になりましたが、私にこのような学びの機会を与えてくれた恒吉先生を始め、このゼミのみなさん、フィールドで出会ったみなさんに感謝します。Salamat po!
院生からのメッセージ ①
比較教育社会学コース 久保寺さつきさん
2016年1月~2017年1月の1年間、スウェーデンのストックホルム大学大学院国際比較教育学コース(International Comparative Education)に交換留学しました。留学を通して経験したこと・感じたことを体験記として書かせていただきたいと思います。
①大学院の授業について
まず教室に入って驚いたのは、生徒の多様さです。英語で授業が行われていたということもあり、様々な国から留学生たちが集まって来ていました。メジャーな欧米諸国はもちろんのこと、ギリシャやシリアなどの東欧・中東、ナイジェリアやガーナなどのアフリカ諸国、中国・韓国(そして日本!)などのアジア諸国など、文字通り世界中からです! スウェーデン人ばかりだと思っていた私にとって、これはとても大きな衝撃でした(学部の授業はスウェーデン語で開講されていることが多い)。
授業スタイルとしては、学生が積極的に発言すること、グループワークやプレゼンテーションが多いことなどが印象に残りました。私は英語があまり得意ではないので始終苦戦していましたが、多様なバックグラウンドを持つ仲間たちと議論をする中で、様々な教育のあり方・考え方について知ることができ、とてもよい刺激になりました。
②日本語ボランティアについて
①で述べたように、クラスメイトたちは世界各国から集まって来ている反面、意外とスウェーデン人との接点が少ないことに気が付きました。そこで、日本語を学んでいるストックホルム大学の学生に対して日本語を教えるLanguage Cafeという活動のボランティアを始めることにしました(Language Cafe自体は日本語以外の言語でも行われています)。日本語を外国語として学ぶ学生との交流を通して、今まで見えてこなかった日本語の美しさ・難解さ、日本文化の面白さ・独特さ、日本社会の良いところ・悪いところなどを改めて知ることができ、とても興味深かったです。
③日本人補習学校ボランティアについて
留学後半には、現地の日本人補習学校でボランティアをしました。ストックホルムに住む日本人夫婦の子や日本人とのハーフの子など、日本にルーツを持つ子どもたちが週に1度日本の教育の補習を受ける学校です。私は小学校低学年を担当しましたが、小さい子どもたちと触れ合うのは久しぶりだったので、楽しい反面少し大変でした。授業中に立ち歩いてしまう子を追いかけたり、集中力のない子に教科書を開いて内容を説明したり…。私が小学校低学年だったころもこんな感じだったのだろうか、担任の先生は大変だっただろうな…と古い記憶を呼び起こすよい機会にもなりました。最後には生徒たちも懐いてくれて、休み時間に遊んだり、お弁当を一緒に食べたりするようにもなりました。
④スウェーデン人の生き方について
スウェーデン人は、家族や友人とのつながりをとても大切にします。「fika(フィーカ)」といって、コーヒーを飲み、お菓子を食べながら、人とおしゃべりすることがとても頻繁に行われています。企業によってはfikaをしながらミーティングを行うところもあるのだそうです。
仕事は定時で切り上げて家族と団らんし、週末には友人とピクニック。日本ではあまり考えられないような、人との関係を大事にしたゆったりとした生活がスウェーデンにはありました。また、女性の社会進出もかなり進んでおり、結婚・出産を経ても働く女性が多く、家庭と仕事の両立は当たり前という雰囲気でした。一人の女性として、スウェーデンでの働き方はとてもうらやましく感じました。
留学というと海外の大学で勉強するだけのイメージがありましたが、現地に住む人々と交流し同じような生活を送ることで、勉強だけでは見えてこないリアルなスウェーデンを体験することができたと思います。1年間交換留学をするにあたり、サポートしてくださった全ての方々にお礼を申し上げます。
院生からのメッセージ ②
比較教育社会学コース 長江侑紀さん
私が本学研究科に入学してから2年が経ちました。現在専攻する教育社会学の深い専門的知識を携えているという自信がなくとも自分の関心について探究したい一心で入学し,様々な出会いと学びの中で突き進んだ修士課程を振り返り,今後同僚として研究される方々や博士課程へ進学する自分にメッセージを残します。
私は幼い頃,山の中を探検し,家と家の間の細い道を散歩することが大好きでした。とてもシンプルで,一方で広く面白い世界に生きていた気がします。しかし,年を経るにつれ,複雑な人間関係の中で「社会化」されていき,例えば日本語を話し,女性として振る舞い,同級生と同じように大学受験を目指す,そういう世界が当たり前であった私をもう一度,面白い場所に連れてきてくれたのが,研究という時の過ごし方でした。しかもその対象が乳幼児であることも,原体験に強く魅かれているのだと思います。
では実際に何をしたのか。もちろん学生であるので,講義を受け,本を読み,議論を交わすことが第一の活動ではありますが,他にも私は保育園へフィールドワークに出かけるということも研究の一環として行いました。これが実は修士課程の中で最も面白くかつ苦しい過程です。初めての場所に生身で飛び込むということの難しさから,この研究方法を選択したことを強く後悔したこともあるほどです。一方で,フィールドで出向くことで出会う喜びや発見は,なぜ私が研究をするかについてもう一度その動機を教え,背中を押してくれます。毎日の仕事に追われる中で「他者」である私に協力してくれるフィールド先のみなさまや,一緒に遊んでくれる子どもたちがいます。何か困ったときには支えてくれる先生方,友人,職員のみなさまもいます。こんな環境で,修士課程の2年間を過ごしました。今後も探究の歩みを続けて行きたいと思える今に感謝しております。
院生からのメッセージ ③
Tan, Chun-Yi
Graduated from the University of Tokyo, Ph.D.
I studied in Professor Tsuneyoshi’s lab for my master and doctoral studies (1). After my graduation in 2017, I came back to Taiwan and started to work on international education affairs in the Ministry of Education, Taiwan.
Studying in this lab was the most fulfilling and exciting part of my academic journey in Japan. Academic rigor and intellectual challenging seminars were wonderful. I especially admired the members of this lab. People were nice, open-minded, and embraced diversity. They are all passionate and excellent researchers. That makes the atmosphere of the lab always joyful, warm and inspiring.
Research training in the lab has prepared us with the ability to think globally. That helps me to deal with educational issues always with an international and comparative perspective. I am also encouraged to be international, to engage in international academic activities, such as presenting my research in international academic conferences, conducting fieldwork overseas, and visiting other prestigious research institutions around the world.
To qualitative researchers, including me, this lab is like home where we can easily exchange ideas with experienced fieldworkers whenever we encounter problems with our research. I am grateful for having plenty of valuable and constructive advice from the members, as well as their understanding and continuous emotional support. They were indispensable for my research journey.
Studying in this lab is not only the preparation of core competencies, skills, and knowledge for my career in the field of international education but also an amazing treasure enriching my life.
(Note)
(1) Though the term “lab” is usually used for the sciences, I use it here because the students studying under Professor Tsuneyoshi form an integrated learning community which is best expressed by the word “lab”.
特別BB 公開研究会開催
2019年7月10日
現在、アメリカ留学中の岩渕和祥さんと木原盾さんに、それぞれの大学で取り組んでいる研究について発表していただきました。参加したゼミ生からは、研究についての質問だけでなく、留学生活、就職活動などについても質問の声が上がり、お二人が実体験を交えて話してくれました。
岩渕和祥(コロンビア大学大学院教育学研究科Ph.D.課程)
木原盾(ブラウン大学大学院社会学研究科Ph.D.課程)